しくじるぐらいがちょうどいい?
入社1〜3年目の若手社員による座談会。 漫画編集者の実態や苦悩などに迫ります!
岩本 悟
2021年入社
ヤングチャンピオン編集部
テレビや映画が好きだったことから、エンタメやメディア関係を中心に就活を行っていたが、大好きな作品である『刃牙』シリーズを手掛けている秋田書店にダメもとで志望したところ見事採用を勝ち取る。
山﨑 香奈
2022年入社
エレガンスイブ編集部
マンガ好きな親の影響を受けて、自らもマンガに携わる仕事がしたいと編集者を志す。出版社の中でも秋田書店はマンガをメインにしていることから、ほぼ確実にマンガ編集者になれると入社を志望。
村上 智優
2020年入社
週刊少年チャンピオン編集部
15年もの間キャッチャーとして野球漬けの日々を過ごす。その時、「自分の才能は大したことはないが、黒子としてエースを輝かせることはできる」と考え、好きなマンガの世界へ進むことに。
01
漫画編集部は体育会系ってよくイメージされますけど、必ずしもそうではないというか。体育会系のノリは強いと思うけど、ちょっとオタクな部分が出ちゃったり。
確かに。僕は野球部だったので「体育会系、大歓迎!」って思って入社したけど、野球部に比べたらみなさん圧倒的に優しかった。女性誌はどうなの?
全然、体育会系のノリなんてないですよ。編集部にとって私は約20年ぶりの新人らしいですが、「下っ端が全部やっとけ」なんて言われたこともないですし、本当に優しいです。少年誌だからですか?
そうかも。編集の仕事では「とにかく体を動かす」ということが求められるので。といっても肉体労働ではなくて、自分でアポ取っていろんな人と会うとか、ネタ集めのために自分でいろんなことを体験するとか。体を動かすという感覚はちょっと体育会系っぽいとは思う。
1年目から求められることって意外と多いですよね。最初はサブ担当として先輩に付いていきながら編集者としての仕事を覚えていくと思っていたら、1年目からほぼ一人で担当を持つこともあります。そういう意味では逆にプレイヤーとして求められているやりがいを感じています。
私も編集部に配属された初日に先輩からネームを渡されて、「作家さんにフィードバックしてもらえる?」と言われました。「え〜?!」って驚いて、めっちゃ汗をかきました。
それはさすがに驚くね(笑)。自分も1年目の時を振り返ってみると、セリフ文字の大きさを決めたりアオリ文を書くのは編集の仕事だということを知らなかった。
それでいうと、僕もグラビアを編集がやるとは思っていませんでした。担当が分かれているかと思っていましたが、全然そんなことはなく漫画とグラビアを両方担当する人もいます。それはそれでとても面白いですけど。
いいなあ。私、グラビアやってみたかったんです。撮影現場とか好きなので見てみたいなって。
02
ヤバいことしか思い浮かばない…。
じゃあ、かわいい失敗でいいですか?私、編集部のロゴが入っている小さい封筒の印刷発注を任されたんです。3000部を発注してそれ自体は問題なかったのですが、次に、「角0の大きな封筒もお願い」と言われたので、同じ部数を頼んでしまったところ、どどーんと大きな段ボールが6箱届いてしまいました…。倉庫に入りきらないので、今も机の横に段ボールが4箱積んであります。
叱られなかった?(笑)。
それが全然。みなさん笑ってらっしゃいました。
僕の失敗は…雑誌の発売日になると宣伝でSNS投稿をするんですが、その時に作品のネタバレになるような内容を投稿してしまって作家さんにお叱りを受けたことがありました。優しい作家さんでしたので一緒にお酒を飲んで許していただきましたが、それ以来、惰性で仕事をしないと心に決めました。
いやいや、僕も作家さんを怒らせてしまうことはしょっちゅうあるよ。じゃあ、僕の失敗は…(以下、相当にヤバい失敗談ですので、みなさんの想像にお任せします)。
ひえ〜…
その時に先輩方が「そもそも村上一人に任せていた自分たちが悪い」とフォローしてくださって。だから、この場ではかわいい失敗談だけにしておきましょう。
いやいや、それを聞いて、「私ももっとデカい失敗をしておけば良かった」って逆に思っちゃいました(笑)。
03
月刊誌の作品になるとページ数が多いのですが、私はまだ一人でプロットを見る力がないので、今はプロットに赤字を入れて、それを先輩方に見ていただいて、さらに赤字を入れてもらっています。
そんなにプロットに赤字を入れるの?
40ページくらいになると、なかなかネームで一発OKは難しいよね。
最初は、「これだと話のつじつまが合わなくなるので、言い回しをこうしませんか?」とかぐらいだったんですが、それを先輩に確認してもらうと、ストーリーが変わってしまうくらい赤字を入れられていてびっくりしました。「おかしければどんどん指示していいんだよ」と言われて、ようやく最近では遠慮なく赤字を入れられるようになりましたが…。
作家の先生にもよるよね。そもそも話が面白ければ赤字は入れないだろうし。
僕もネームで面白かったら「良いですね!」って一発OKな時もあるな。
僕は、初めて作家さんに連絡した時に、用件だけ伝えて電話を終えたら「もっと違う話もしなきゃダメだよ」と先輩に言われたことがありました。
作家さんも、僕らと雑談しながら世の中でどんなことが流行っているかわかるし、自分たちも作家さんを理解する機会になるからね。おしゃべりするのが好きな方も多いから。
私はおしゃべりなのでめっちゃ話をしています!その中で「漫画にしてみたい」と先生に言ってもらえたことがあって、とてもうれしかったです。
04
4本の雑誌とwebサイトの漫画に関わっているので、いつもスケジュール管理に悩んでいます。特定の日にネームがたくさん上がってくると「どうしよう?!」とパニックになる時があります。どうしたらいいですか?
村上さん、お願いします!
ありきたりかもしれないけど、やらなければいけないことを付箋に書き出して、どれからやるか線引きしてみたら?仕事が終わったものに線を引いていくと、意外とすんなり終わっていくと思うよ。それと、なるべく作家さんの都合を優先するために、常日頃から作業時間の中にゆとりを持たせておくことも大事。
僕も付箋に書き出しています。それと、早め早めに仕事を終わらせることも。「この仕事は来週でもいいかな」と思わず、すぐに片付ける意識を持っておくと後から後悔しなくなりますよね。
そうそう、もし翌週が暇になったら、勉強のために漫画を読んでいればいいわけだし。なかなかないけど(笑)。
確かにそうですね、付箋やってみます。もう一つ悩みがありまして、新人作家さんの持ち込み対応をしていますが、私も新人なので「相手の方を不安にさせているかもしれない」と思って言葉に詰まってしまうことがあります。
僕が先輩から言われたのは、まず作家さんにお会いしたら「今何年目です」と、変に飾らずにきちんと経歴を明かしなさいと。上司にも若いうちは「いったん持ち帰らせてくださいと言えるから、わからないことがあれば先輩や上司に聞いたらいい」と教えてもらいました。
岩本が言うように、自分の経歴をきちんと明かして、基本的には落ち着いて話をする。等身大をさらすのが大事だと思う。
ありがとうございます!実は、さらにもう一つありまして…。私、編集部にかかってくる電話の対応が苦手でいつもドキドキしちゃいます。社外の人と話をしているのに、「◯◯さんは今不在です」と社内の人にも「さん」付けしちゃったり。なので、「はい、エレガンスイブ編集部です」などと書いた紙を電話にベタベタ貼っています。
これは、ちゃんと解決しているじゃん(笑)。
対策できているならいいね(笑)。岩本はなんか悩みある?
企画に関する漠然とした悩みは常に持っています。形になりそうな企画はあるけど、描ける作家さんが見つからないとか、どこで探したらいいかとか、企画会議にまだ通っていないしなとか。ふわっとした悩みが多いです。焦りが出てきますよね、2年目って。
2年目になると周りと比べられるようになるから、「どうしよう」って思うことが増えるからね。僕だって3年目になってもまだヒット作品をつくってない。これが正解というものがあれば本当に楽なんだけど、それがないから試行錯誤している。「自分は面白いと思っていても、世間がわかってくれない」と思うことなんてザラにあるから。
本当にそう思いますね。
05
とりあえず新人の私が心がけているのは、作家さんから連絡をいただいたら返事を早くすること。これしかないです。私、友人からLINEをもらっても平気で1週間も返事しないんですが、仕事では本当に早く返事するようにしています!
友だちにも早く連絡してあげたほうがいいよ(笑)。僕は返事が来なかったら傷つく。
大切な話ならもちろん返事します!ただ、LINEでは基本大切な話ってあんまりされないので(笑)。
僕が心がけているのは…。これは梅澤編集長の受け売りですが、「うまくいかない作家さんがもしいたとしても、その人の優れた部分を引き出して売れる作品を一緒につくっていくのが、編集者のいる意味だよ」と教えてもらい、それからは人とのつながりを大切にするよう意識しています。
本当にその通りだね。僕はなんだろう?最近、仕事で心がけているのは、そもそも「自分のやるべきことをちゃんとやる」ことが第一なんじゃないかって思っている。少しでも自分の仕事を早く終わらせて、いろいろな作家さんとやり取りして「あいつはやることやってるな」と思われるぐらいじゃないと。
あと私、机が綺麗な方に憧れるんです。本質的な話ではありませんが、とにかく机が綺麗な先輩を見ると仕事できそうだなって思います。私は1年目なのに机がすごく汚くて、引き出しも開きっぱなし。でも、机の上に何もない方がいて、「どうやって整理しているんだろう?」っていつも不思議。たぶん時間をかければ整理できると思いますが…。私が怠けているってことかなって。
紙とか漫画とか、物が多いのである意味仕方ないのかもしれないけどね。
入社した時に、「他人が見てどこに何があるかはわかるようにしたほうがいい」と教えられて、机もそうだしパソコンの中も誰が見てもわかるようには心がけているよ。自分がいない時に問題が起きたら誰かが対処しなければならないから。
僕も1年目はひどかったですけど、ちょっと反省して今はパソコンの中身を整理するようにしました。原稿のデータとかどこにあるかわからないのは、ちょっとやばいので。
それこそ週刊誌だと、次週の作品を間違えて入稿しちゃうと大変。やっぱり整理しておくにこしたことはないよ。
私も、パソコンは大丈夫です。ビビりな面もあるので、原稿なくしたら大変ですから机の上も頑張ります!ただ、今からもう年末の大掃除がおそろしいです…。
ウチは、大掃除の後は、机の上にも下にも物を置いちゃダメだからね。上手に隠してね(笑)。