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就職した年に開始し、今でも続いている趣味が一つある。
アニソン&VOCALOIDのDJだ。
DJ機材になど全く触ったことのなかった15年前、最初に配属された部署の上司に
「今度DJパーティ開くからお前もやってみろ」という無茶ぶりに応える形で、初めて挑んだDJ。
クラブって怖い所なんじゃないだろうか…そこでDJとかって大丈夫なんだろうか…。
とにかく不安だったことを覚えているが、結局のところ「何だか面白そう」という興味の方が勝ってしまい、半ばヤケクソで参加を決めた。
それが、まさか15年も続く趣味になろうとは思いもしなかったが。
15年。
振り返れば本当に様々なことがあったが、過去を振り返ると、決まって高校時代に友人と話したとある話題のことを思い出す。
「人生をやり直せるとしたらどうするか?」
というものだ。
もしも人生をやり直せるとしたら…。
私はもっと勉強をしていただろう。
数学がとにかく苦手で経済を読み解く力がないことを痛感しているから、きっと数学を重点的に勉強して将来に備えたはずだ。
きっと別の仕事…もっと楽して儲かる仕事に就いていたのではないだろうか。
少なくとも、バクチな側面のある漫画編集という職業を選ぶことはなかっただろう。
もしも人生をやり直せたとしたら……。
きっとそれはとてつもなくつまらない人生になっていたのだろうな、と思う。
これまで生きてきて、私はあらゆる局面で「選択」をしてきた。
それらは常に、その時その時で最良だと思った選択肢を選んできていたはずで、
勿論それは正解ばかりではなく後悔に苛まれることもあった。
浪人時代に勉強をしなくてはいけないのに、私は漫画を読むことをやめなかった。
それは冷静に考えれば最悪のルートだったのかもしれないけれど、
あの時『シグルイ』や『なるたる』や『GUNSLINGER GIRL』を読まなければ、私はあの衝撃を得ることが出来なかったはずだ。
結果、成績は振るわなかったことも多く、「なぜ自分はあんなムダな時間を…」と何度も後悔したが、
しかし私は10代で様々な「面白いもの」に出会うことが出来た。
思えば自分の選択の基準は「面白そうかどうか」というものが多かったのではないかと思う。
いつも、より「面白そう」と思う方に転がってきたように思う。
そしてその選択の基準は、今の漫画編集者という仕事にとってはすごく重要な要素であると感じている。
“面白いかどうかは作ってみないと分からない。
でも自分や作家、そして読者にとってより「面白そう」なのはこっちではないか”
そうやってこれまで漫画作りに携わってきたと思う。
勿論、ビジネスである以上、儲かる仕事をしなくてはならないが、正直、面白くなければその第一関門を突破することも難しい。
「どっちか迷ったらより面白そうな方を選ぶ」、あらゆる局面でそんなふうに選択をしてここまで辿り着いたように思う。
人生をやり直せたとしたら。
少なくとも今の自分には、今以上に面白そうなやり直しは出来なかったのではないかと思う。
それくらいに、私は今、楽しく漫画編集が出来ている。
細かい後悔を挙げればキリがないが、やり直した方がきっと後悔する。
そんな気がする。
だから仕事も「面白そう」なことをし続けていきたい。
「面白そう」で続けてきたDJ活動もこれからも続けていきたい。
「面白そう」だからと変な酒に手を伸ばして酔い潰れて終点の駅まで辿り着き、
戻りの終電をなくしてしまっても後悔はない。ええ、ありませんとも。
漫画編集者は「面白そう」だと思ったならば、どうぞ門を叩いてみてください。
正直言って、この仕事は大変だけど楽しいです。

Y.D.
2009年~2010年 プリンセス編集部
2010年~2012年 サスペリアミステリー編集部
2012年~2017年 月刊少年チャンピオン編集部
2017年~2023年 プリンセス・ボニータ編集部
2023年~ チャンピオンクロス編集部 配属
愛知県出身千葉県育ち。現在神奈川県川崎市在住。
中高時代は剣道部に所属していたが、大学時代は軽音楽サークルに身を置く。
もともとアニメや漫画、小説、映画、音楽といったエンターテイメントが大好きで、
その分野の中でも特に大好きだった漫画の編集者を志し、秋田書店の門を叩く。