変転

物事は移ろっていくのが世の常です。
我らが飯田橋近辺のビルも老朽化が進み、建て替え工事が増えてきました。

昨年には秋田書店の編集者が代々お世話になってきた水道橋の名カプセルサウナ・ASUKAが
その長い歴史に幕を下ろしてしまいました。
ホームサウナを失ってしまったウチのBOSS(編集長)は僕がよく利用しているLaQuaまで足を伸ばすようになり、
休日に大浴場で視線を感じ振り返るとプリミティブな御姿のBOSSがコチラを睨んでいる…
なんていう事件が頻発するようになって少し困っています。

ダイナミックに話が逸れましたが御多分に洩れず、そんなピリオドが今度は秋田書店にも打たれようとしています。
今の秋田書店本社社屋が建てられたのはなんと1973年(昭和48年)。築50年を超える大ベテランです。
そりゃあエアコンは壊れるし、エレベーターは止まるし、地震が来たら驚くほど揺れますよね。
本社社屋建て替えの計画は着々と進み、2024年いっぱいで今の社屋とはお別れし、
しばらくの間は仮移転先のオフィスで仕事をすることとなりました。

またまた鋭く話が逸れますが、僕の隣の席には「昭和」から手足が生えたような大先輩が鎮座しています。
社内では朝起きてから寝るまでに100のルーティンがあると噂されているほどの拘りの多い先輩で、ランチは蕎麦一択。
そんな叔父御が愛してやまない、ランチタイムによく連れていっていただく行きつけのお蕎麦屋さんがあるのですが、
先日そちらで蕎麦を啜りながら店員さんと「会社が移転してしばらく来れないかもしれない」というお話になりました。
するとなんということでしょう。
店員さんが、年末最終営業日に叔父御の大好物の冷やしたぬき(※夏限定)を特別に出しますよと笑顔で約束してくれたのです。
隣でそのやりとりを聞いていた僕は、とても温かい気持ちになりました。
これが老舗蕎麦屋の“人間愛”であり、ベテラン編集者の“人間力”なのかと。
相手が漫画家さんでもそうだと思います。相手を思いやり尽力し、全力で描いていただく。
持ちつ持たれつの心地良い信頼関係があるからこそ為せる業なのだと思いました。
同時に、自分もそういう編集者になりたい、ならなければとも。

月日と共に色々なものが移り変わっていく世の中ですが、自分の中の決意や核の部分は曲げずに歳をとっていきたいものですね。
新社屋が完成して飯田橋に戻ってきた後、また笑顔で蕎麦を啜る日が来るのが楽しみです。

井筒 隆平 2019年4月 入社
同年6月 ヤングチャンピオン編集部 配属
商社マンを夢見て就活を始めるも英語力が絶望的で断念し、
就活浪人する覚悟で大好きだった漫画を扱う出版社を志望。
唯一秋田書店の選考で最後まで残り今に至る。