「日本で一番高い山はf…」ピンポーン「北岳!」

「会話するときフルコンボ取ろうとしていませんか?」
季節も秋めいてきて、少し肌寒くなってきたころだったと思う。その言葉を聞いた私は街中で1人、滝のような冷や汗をかいていた。


「あの人はコミュ力があって~」「私はコミュ症だから~」などなど、「コミュニケーション」という営みの価値があがってきている現代。これを読んでいる就活生の中でコミュ力に自信がない人はどれだけいるだろうか。
その中でも例えば「初対面の人と喋るときは緊張してしまって上手く喋れないけれど、回数を重ねるうちに徐々に親交が深まって喋れるようになる」タイプは、そこまで自分のコミュ力に不安を覚える必要はないと断言できる。あなたは“コミュニケーション”をしようとしているから。
危機感を覚えるべきは「初対面の人と話す時、1回目は話がとても弾んで2回目以降から回を重ねるごとに徐々に話下手になる」というタイプであると感じる。かくいう私もそのタイプであるし、今も改善しようともがいている最中である。

そもそもコミュニケーション(この場では「会話」ということに絞る)ってなんだろう、といったところだが「会話のキャッチボール」とよく例えられるように、会話とは相手と自分の言葉の往復を繰り返すことにある。みたいな認識で止まっているのが前述した危ないタイプであり過去の私である。端的に言えば「他者に興味がない」。

会話を往復することだけに終始してしまい、往復すること自体に安心感と満足感を得られる過去の私は、会話とは名ばかりの相手を使った一人早押しクイズをするロボットであった。相手の言葉に対して、“正解”となりえそうな言葉を探して導きだした答えを発してニッコリ。お返しに相手にも会話という名のクイズを出してニッコリ。言葉の後ろの相手のことなんて目に入ってもいなかった。

当然このタイプは初対面の人と話すことは得意だと錯覚する。今までの人生で幾度となく繰り返してきた「出身は~」「何の趣味が~」など初対面の人と話すときに使われがちなテーマで会話するのだから、“正解”っぽい言葉も学習済みでスラスラと言葉が往復される。AとくればBとくる。海とくれば山とくる。満点フルコンボ(と錯覚しているだけの)会話は気持ちいいものである。ただ、悲しいかな。回を重ねるごとに、コミュニケーションではなく言葉の往復にやっきになっていた自分の浅はかさが露呈していき話せることが無くなり話下手になるのだ。

そんなタイプから脱却するのは、とても大変だと思う。人に興味を持つことを意識しすぎて、質問ばかりのインタビュアーになったり、自分を開示することを意識して話してばかりのスピーカーになることもあるかもしれない。そもそも会話で、その場に即した言葉じゃないかもと思いながら発言するのはとても怖いかもしれない。それでも失敗を繰り返していくうちにちょっとずつコミュニケーションというものが出来るようになると思うし、私自身の身をもって証明していきたいとも思っている。

これを書いてたら冷や汗で脇びしょで、シーブリーズ買いにいくので終わります。

ico06

田中 良樹 2021年4月 入社
同年6月 週刊少年チャンピオン編集部 配属
幼いころから漫画が大好きで漫画に携わる仕事にしか就きたくなかった大学生時代。
就活先は出版社数社と、保険としての公務員試験のみだった。幸運なことに秋田書店に入ることができ、今現在に至る。