自ら立ち上げた作品が
世の中に浸透するよろこび。
漫画を理解するためのイロハを教えてくれた
「弱虫ペダル」
入社して2年間は、秋田書店を志望するきっかけとなった「弱虫ペダル」のサブ担当を務めました。メイン担当の先輩編集や渡辺航先生から、どうしたらキャラクターが魅力的に輝くか、読みやすくするための工夫など、打ち合わせを通して漫画づくりの手ほどきを受けました。また「弱虫ペダル」はアニメも大ヒットし、さまざまな企業とコラボを行ってきたメディアミックスが盛んな作品ですので、作品を広く展開することについてもよく学べました。コラボグッズの版権監修を始め、舞台やドラマの関連グッズを雑誌の応募者全員サービスとして付けたり…。「これも編集者の仕事なんだ」と、仕事の幅の広さを実感したのもこの時期です。これらの経験は漫画編集の指針となり、担当作「魔入りました!入間くん」に大きく活かすことができました。西修先生ともよく話していますが、「入間くん」という作品にとって「弱虫ペダル」の存在は必要不可欠でしたね。
本格ファンタジー作品
「魔入りました!入間くん」との出会い
入社3年目、当時の編集長から「連載を目指してやってみたら」と激励を頂き、中村勇志先生と立ち上げたのが「六道の悪女たち」。そして、さらなる新作漫画を、と考えていた頃に西修先生と意気投合し「明るい作品を目指そう」と立ち上げたのが「魔入りました!入間くん」です。西修先生と打ち合わせをした、その日のうちにプロットが上がってきたのをよく覚えています。キャラクターみんなが魅力的で、早速、読み切り用にネームを描いていただいたのですが、「面白いから連載にしよう!」と編集長の即断があり(笑)読み切りではなく連載が始まりました。主人公・入間くんの成長を描いた骨太な本格ファンタジーとして、今では週刊少年チャンピオンを代表する作品になりましたね。連載開始直後から読者の皆さんには好評でしたが、コミックスの5巻目のあたりで最初の山場を迎えた気がします。初のサイン会を実施して、読者の皆さんの熱気を目の当たりにした時、この作品が持つ底力を実感しました。その後、NHK Eテレでアニメ化され、若年層の読者が急激に増加。素晴らしい作品の誕生に立ち会えたことを嬉しく思っています。
自分の想像が実現してカタチとなるうれしさ
「魔入りました!入間くん」の新たな展開を模索し、西先生と「入間くんではない一般生徒のスピンオフ作品」について何度か話し合っていました。それとは別で、動画制作グループ『○○の主人公は我々だ!』の動画について雑談でよく盛り上がっていたのですが…。ある日ふと「彼らが悪魔になってバビルスにいたら面白いのではないか」と思いつき、すぐさま企画書を書き始めて、実現したのが「魔界の主役は我々だ!」です。
「我々だ!」のファンの皆さんから注目を集め、漫画担当の津田沼篤先生のクオリティーも素晴らしく、1話目から反響は大きかったですね。現時点で累計150万部を突破している大ヒット作ですが、入間くんを多くの人に知ってもらえる機会にもなり、目覚ましい効果を上げたコラボとなりました。ちょっとした発想が実を結んだ時、編集者としてすごくやり甲斐を感じます。一方で担当作品がヒットすると、その分、責任やプレッシャーが大きくなります。自分の働きが先生方の喜びにつながっているかどうかを常に念頭に置くようにしています。
漫画家の先生と一緒に物語をつくる刺激的な仕事
初めは先生と2人で話し合い、そこから生まれた物語が少しずつ大きくなり、やがてたくさんの人が関わるようになっていく。自ら立ち上げた作品が世の中に浸透していく時の喜びは、筆舌に尽くしがたいものがあります。単行本の1巻が書店に並んだ時や、アニメの制作が決定した時の感動は今でも覚えています。漫画編集者の醍醐味ですね。入間くんのさらなるヒットを目指すことはもちろんですが、並外れた才能を持っている西修先生や津田沼篤先生という存在を世の中に知ってもらい、先生方の活躍の場をさらに広げていくことが目標です。それと、才能あふれる新人作家の発掘。みんなが惚れるような「漫画家」のスターを探し、育成することが漫画編集者としての使命であり、会社や雑誌の未来につながると思っています。
働く上で僕がずっと大事にしていることは、先生と一緒に盛り上がれるかどうか。毎週とことん打ち合わせしているのは、我々が盛り上がれば読者の方にも楽しんでもらえると信じているからです。このように物語の創造に付き添える仕事は、最高にエキサイティングですね。
私の仕事道具
原稿カバン
大切な原稿を持ち運ぶためのプラスチック製のハードケースです。生原稿を折り曲げたり、汚さないためにもカバンは必需品です。今では多くがデジタルでのやりとりとなっていますが、先生との打ち合わせの際には必ず所持しています。